第1回 その肩の痛み、ただの肩こり?四十肩(五十肩)の基本と自己チェック
痛みのサインを見逃さないで!あなたの肩は大丈夫ですか
「最近、どうも肩が重い」「腕を上げようとするとピリッと痛みが走る」「まさか、私も四十肩?」――。
40代以降になると、肩の不調を感じる方は一気に増えます。多くの方が「単なる疲れ」「ひどい肩こりだろう」と軽く考えがちですが、その痛みが「四十肩(しじゅうかた)」、または「五十肩(ごじゅうかた)」と呼ばれる症状かもしれません。
単なる肩こりと四十肩は、似ているようで全く異なる厄介な症状です。適切に対処せずに放置してしまうと、痛みが長引き、最悪の場合、肩の動きが固まって日常生活に大きな支障をきたすことになります。
この全10回のシリーズでは、四十肩を正しく理解し、痛みとどのように向き合い、そして克服していくかを、段階を追って徹底的に解説していきます。第1回となる今回は、四十肩とは何か、そしてあなたの痛みが四十肩である可能性をチェックする方法について詳しくお話ししましょう。
四十肩(五十肩)とは? 正式名称とメカニズム
私たちが日常で使う「四十肩」や「五十肩」という言葉は、医学的には「肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)」と呼ばれます。
なぜこの名前がつくのでしょうか?
名前の通り、40代から50代に多く発症することが特徴です。肩の関節を構成している骨や軟骨、腱、そして関節全体を包んでいる「関節包(かんせつほう)」といった組織の周りに炎症が起きることで、痛みや動きの制限が生じます。
この炎症は、加齢に伴う組織の老化や、使いすぎによる微細な損傷などが原因ではないかと考えられていますが、実は明確な原因はまだはっきりと解明されていません。だからこそ、特定の原因がないのに発症した肩の痛みを「肩関節周囲炎」と総称しているのです。
特に炎症が強くなると、関節を包む袋である「関節包」が硬くなり、周囲の組織と**癒着(ゆちゃく)**してしまうことがあります。こうなると、肩の動きが氷のように凍り付いたように固まってしまうため、「凍結肩(とうけつかた)」と呼ばれることもあります。
それ、「肩こり」じゃないかも!四十肩と肩こりの決定的な違い
「肩が凝っただけ」と思って放置していると危険です。あなたの肩の痛みが四十肩なのか、それとも一般的な肩こりなのかを見分ける、決定的な違いを知っておきましょう。
| 特徴 | 四十肩(五十肩) | 一般的な肩こり |
| 痛みの主な原因 | 関節周りの組織の「炎症」 | 筋肉の緊張による「血行不良」 |
| 痛む場所 | 肩の関節(奥深く)が中心 | 首から肩にかけての筋肉(表面) |
| 夜間痛 | 激しい痛みで眠れないことが多い | 通常、夜間痛で目が覚めることは稀 |
| 可動域の制限 | 腕が上がらない、回せないなど制限が出る | 制限はほとんどなく、動かせる |
| 経過 | 治療せずに自然に治るまで数カ月~数年かかることがある | 休養やマッサージで比較的早く改善する |
最も大きな違いは、「炎症」と「可動域(動かせる範囲)の制限」です。
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肩こりは、筋肉のハリやだるさがメインで、腕を動かすこと自体はできます。
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四十肩は、関節そのものに炎症が起きているため、**「腕を上げようとすると激痛が走る」「服の袖に腕を通せない」「髪を洗えない」**など、特定の動作で痛み、やがて動かせる範囲が極端に狭くなります。
見逃してはいけない!四十肩の具体的な初期症状
四十肩の痛みは、発症から治癒までの経過によって「急性期」「慢性期」「回復期」の三段階に分けられます。初期に見られる具体的な症状は、このうちの「急性期」の特徴です。
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特定の動作で激しい痛み(運動時痛)
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腕を真上や横に上げる動作(洗濯物を干す、吊革につかまる)
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腕を後ろに回す動作(背中のファスナーを上げる、エプロンの紐を結ぶ)
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急に肩に力を入れたとき(くしゃみ、咳)
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夜間にズキズキとうずく痛み(夜間痛)
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寝返りを打ったときや、痛い肩を下にして寝たときに激痛で目が覚める。
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安静にしていても、夜になると痛みが強くなる。
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肩から腕にかけての鈍い痛み
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肩全体が重く、ダルいような、鈍い痛みが続く。
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この中でも、特に「夜間痛」がある場合や、「痛みのために腕がほとんど上がらない」という場合は、四十肩である可能性が非常に高いと考えられます。
あなたは四十肩?簡単セルフチェックリスト
自宅で簡単にできる、あなたの症状が四十肩の可能性があるかをチェックしてみましょう。
| 項目 | はい | いいえ |
| 1. 肩の痛みが始まってからまだ数週間~数カ月である(痛みが強い時期) | ||
| 2. 夜、寝ているときや寝返りのときに、肩の痛みで目が覚める | ||
| 3. 腕を真上に上げようとすると、痛くて肩の高さ以上には上がらない | ||
| 4. 背中に腕を回してエプロンの紐を結んだり、下着をつけたりするのがつらい | ||
| 5. 痛い方の肩を下にして横向きに寝ることができない | ||
| 6. 痛み止めを飲んでも、痛みが完全に消えない | ||
| 7. 痛い方の肩から腕にかけて重さやだるさを感じる |
【チェック結果の目安】
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「はい」が4つ以上:四十肩の可能性が非常に高いです。特に項目2・3・4に「はい」がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
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「はい」が1~3つ:四十肩の初期や、他の肩の炎症性疾患の可能性があります。症状が続く場合は一度、専門医に相談しましょう。
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「はい」がない:肩こりや軽度の筋肉疲労の可能性が高いですが、痛みや不快感が続く場合は、念のため整形外科医の診察を受けることをおすすめします。
⚕️ 受診の目安と早期治療の重要性
四十肩は「放っておいても治る」と言われることがありますが、これは数カ月〜数年という長い期間をかけて自然に症状が落ち着く、という意味であり、放置しても良いということではありません。
痛みがピークの時期に適切な治療や安静を怠ると、肩の動きが固まる「拘縮」が強く残り、その後のリハビリが非常に困難になることがあります。
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特に受診すべきサイン:
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夜間痛で睡眠が妨げられているとき。
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痛みのせいで、日常生活(着替え、洗髪など)に支障が出ているとき。
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痛みが2週間以上続いているとき。
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自己判断せず、必ず整形外科を受診し、医師の診断を受けましょう。四十肩と似た症状を示す「腱板断裂」などの疾患が隠れている可能性もあります。正確な診断を受けることが、早期改善への第一歩です。
次回のブログでは、あなたの肩がなぜ動かなくなるのか、四十肩の「原因と痛みの正体」について、さらに深く掘り下げて解説していきます。







