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第1回:「手術適用外」でも辛いものは辛い。                     大人の側弯症が抱える「見えない不調」の正体

はじめに:病院で「様子を見ましょう」と言われたあなたへ

「レントゲンを撮りましたが、手術するほどの角度ではありませんね。経過観察しましょう。また痛くなったら来てください」

整形外科の診察室で、この言葉を聞いて途方に暮れた経験はありませんか?

あるいは、学生時代の学校検診で側弯症(そくわんしょう)を指摘されたけれど、特に治療をすることなく大人になり、日々の仕事や家事に追われている方も多いでしょう。

日常生活は送れている。歩けないわけではない。重いものも持てる。 周りの人からは「姿勢が少し悪いんじゃない?」と言われるくらいで、あなたの背骨が曲がっていることによる本当の苦しみには気づいてもらえない。

しかし、あなたの体感はどうでしょうか。

  • 朝起きた瞬間から、背中に鉄板が入っているような強張りがある。

  • 夕方になると、片方の肩甲骨の内側が焼け付くように痛む。

  • マッサージに行っても「硬すぎますね」と驚かれるだけで、翌日には元通り。

  • 深く息を吸おうとしても、肋骨が突っかかって酸素が入ってこない気がする。

もしこれらに一つでも当てはまるなら、あなたは「病気ではないが、健康でもない」という、非常に辛いグレーゾーンにいらっしゃいます。

このブログシリーズは、そんな「日常生活はなんとかこなせるけれど、慢性的な不調に悩み続けている側弯症の方」に向けて書いています。

医学的な「手術」の対象ではなくても、あなたの「痛み」は現実です。 全10回にわたり、なぜその痛みが起こるのか、どうすれば楽になるのか、そして一生付き合っていくこの体とどう向き合えばいいのかを、専門的な視点から、でも分かりやすくお伝えしていきます。

側弯症患者さんが抱える「3つの痛み」の正体

「側弯症=背骨が曲がる病気」と単純に捉えられがちですが、大人の側弯症患者さんが日常で感じている苦痛は、大きく分けて3つの要素が絡み合っています。

1. 筋肉の不均衡による「過労痛」

背骨がS字(あるいはC字)にカーブしているということは、物理的に考えて、背骨を支えている左右の筋肉の長さや緊張度が違うということです。

例えるなら、常に「片方の手で重い荷物を持ち続けている」ような状態が、24時間365日続いています。 凸側(背中が盛り上がっている方)の筋肉は常に引き伸ばされながら緊張し、凹側の筋肉は縮こまって固まっています。 あなたがリラックスしてテレビを見ているつもりでも、体の中の筋肉は、倒れようとする背骨を支えるために、必死で筋トレを続けているのです。これが、休んでも取れない「慢性的なコリ」の正体です。

2. 関節のロックによる「機能不全痛」

背骨は一つ一つが積み木のように連なり、本来であれば前後左右に柔軟に動くはずです。 しかし、側弯がある箇所は、骨同士の噛み合わせが悪くなり、動きが極端に悪くなっている(ロックされている)ケースがほとんどです。

動かない関節があると、その分を別の関節(首や腰など)が過剰に動いてカバーしようとします。 その結果、「背中が悪いのに、痛いのは首」「腰が悪いのに、痛いのは股関節」といった、原因と結果が離れた痛みを引き起こします。これを「関連痛」や「代償動作による痛み」と呼びます。

3. 自律神経の乱れによる「不定愁訴」

ここが見落とされがちですが、非常に重要です。背骨のすぐ脇には、交感神経幹という自律神経の通り道があります。 背骨や肋骨周りがガチガチに固まっていると、常に自律神経が圧迫・刺激され、「常に戦闘モード(交感神経優位)」になりやすくなります。

  • 理由もなくイライラする

  • 夜、なかなか寝付けない

  • 胃腸の調子が悪い

  • 天気の変化で頭痛がする

これらは「性格」や「体質」のせいではなく、側弯による背骨の緊張が引き起こしている可能性があるのです。

「治らない」と諦める前に知ってほしいこと

ここまで読んで、「原因が骨の形にあるなら、もう諦めるしかないのでは?」と思われたかもしれません。

確かに、成長期を過ぎた大人の骨の変形を、手術なしで真っ直ぐな定規のような状態に戻すことは不可能です。巷にある「側弯が治る!」という極端な広告には注意が必要です。

しかし、「骨が曲がっていること」と「痛みがあること」はイコールではありません。

ここが最も重要なポイントです。 レントゲンで見れば大きく曲がっていても、痛みなく元気にスポーツを楽しんでいる人はたくさんいます。逆に、カーブは軽度でも、激痛で動けない人もいます。

この差はどこにあるのでしょうか?

それは、「柔軟性(あそび)」「バランス」です。

たとえ背骨が曲がっていても、関節が一つ一つしなやかに動き、筋肉が過剰に緊張していなければ、痛みは劇的に減らすことができます。 「構造(骨の形)」は変えられなくても、「機能(体の動き)」はいくらでも変えることができるのです。

メンテナンスという新しい選択肢

病院での治療(手術や装具)と、何もしない放置。この二択の間に、「メンテナンス(定期的なケア)」という道があります。

  • 固まった筋肉を的確に緩める。

  • 動かなくなっている関節に「動き」をつける。

  • 呼吸を深くして、自律神経を整える。

これを行うことで、「曲がっているけれど、痛くない」「曲がっているけれど、疲れない」という状態を作ることは十分に可能です。

私たちは、側弯症を「治すべき病気」として敵対視するのではなく、「少し手のかかる、でも愛すべきパートナー」として捉え直し、うまく付き合っていく方法を提案したいと考えています。

次回予告:なぜあなたの背中は「片側だけ」痛むのか?

今回は、側弯症の方を取り巻く現状と、痛みの正体についてお話ししました。 「自分の辛さは、気のせいじゃなかったんだ」と、少しでも安心していただけたら嬉しいです。

次回は、もう少し身体の仕組みに踏み込みます。 「なぜ片側だけ凝るのか? 側弯症特有の重力と筋肉のメカニズム」について解説します。

  • なぜ右の背中と左の腰がセットで痛くなるのか?

  • 重力が側弯症患者さんにとって最大の敵である理由

  • マッサージを受けてもすぐ戻ってしまう謎

これらを解き明かすことで、ご自身の体への理解がさらに深まるはずです。 どうぞお楽しみに。

※ご相談はこちらからお気軽になさってください。

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