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【第8回】その椅子、合ってる? 猫背にならない「最強のコックピット」を作る、0円からのデスク環境改革


【はじめに】あなたは「家具」に負けているだけかもしれない

「施術を受けた直後は調子が良いのに、会社に行くと夕方には背中が丸まってしまう」 「気をつけようとしても、気づくとモニターに顔を近づけている」

この連載を読んでくださっている意識の高いあなたなら、きっとオフィスでも姿勢を正そうと努力されているはずです。 しかし、もしその努力が報われないとしたら…それはあなたの意志が弱いからではありません。

あなたの座っている椅子やデスクの配置が、強制的にあなたを猫背にさせているからです。

これは、いわば「傾いた坂道でボールを止めようとする」ようなもの。環境が傾いていれば、どれだけ筋力を使っても、ボール(体)は転がっていってしまいます。

第8回のテーマは「環境設定」。 高いオフィスチェアを買い換える必要はありません。タオル1枚、雑誌数冊あればできる、あなたのデスクを「猫背にならないコックピット」に変えるプロの裏技を伝授します。


1. なぜ、高級チェアでも腰が痛くなるのか?

「人間工学に基づいた高い椅子を使っているのに、腰が痛い」 そんな声をよく耳にします。

理由は単純です。「あなたの体にフィットするように調整されていないから」です。

身長150cmの女性と、180cmの男性が同じ設定の椅子で快適なはずがありません。 しかし、多くの人は椅子の高さ調整レバーをほとんど触らず、なんとなくの高さで座り続けています。

猫背にならないための絶対ルールは、「骨盤を立てたままキープできるかどうか」。 そのために必要なのは、以下の3つのポイントの微調整です。

  1. 足の裏

  2. 膝と股関節の角度

  3. 目線の高さ

これらが一つでもズレていると、脳は不快感を覚え、楽な姿勢(=猫背)へと逃げようとします。


2. 【調整①】椅子は「膝」ではなく「お尻」で合わせる

まず、椅子の高さです。 多くの人が「足が床につく高さ」で合わせていますが、プロの視点は少し違います。

正解は、「膝よりも股関節の位置が『わずかに高く』なる位置」です。

膝と股関節が同じ高さ、あるいは膝の方が高い位置(ソファのような座り方)になると、構造上、骨盤は後ろに倒れ(後傾)やすくなります。これが腰猫背のスイッチです。

【実践テクニック】 椅子を少し高くして、太ももが床と平行ではなく、膝に向かって少し下がるスロープになるように調整してください。 もし、それで足が浮いてしまう(かかとがつかない)場合は、足元に「フットレスト(足置き)」を置いてください。空き箱や電話帳でも代用可能です。

「足裏がべったりつき、かつ膝がお尻より少し低い」 この状態を作るだけで、骨盤は驚くほど自然に立ち上がります。


3. 【調整②】0円でできる!「タオルくさび」の魔法

「会社の椅子が古くて調整できない」 「座面がヘタっていてお尻が沈み込む」

そんな環境の方におすすめなのが、バスタオルを使った裏技です。

【タオルのくさび(Wedge)術】

  1. フェイスタオルかバスタオルを折りたたみ、厚みのある座布団状にします。

    それを、椅子の座面の「後ろ半分だけ」に敷きます。

  2. その上にお尻の「坐骨(ざこつ)」を乗せて座ります。太ももの裏はタオルに乗せず、直接椅子につけます。

こうすると、お尻側だけが高くなり、座面に「前傾斜(前下がりの坂道)」が生まれます。 このわずかな傾斜があるだけで、骨盤は物理的に後ろに倒れることができなくなり、強制的に「良い姿勢」でロックされます。

高価な骨盤矯正クッションを買う前に、まずはタオルでこの感覚を試してみてください。「あれ、頑張らなくても背中が伸びる!」と驚くはずです。


4. 【調整③】頭の重さを消す「モニターの高さ」

最後は、上半身の猫背(スマホ首・巻き肩)を防ぐ設定です。

あなたのパソコンのモニター、低すぎませんか? ノートパソコンを机に直接置いて作業している場合、視線は斜め下に向きます。 視線が下がると、頭は自然と前に落ちます。 これが、5kgのボーリング玉(頭)が首を破壊する瞬間です。

【実践テクニック】 モニターの上端が、「目線の高さ、または目線よりやや下」に来るように高さを上げてください。

  • デスクトップの場合: モニターの下に分厚い本や空き箱を挟んで高くする。

  • ノートPCの場合: 外部キーボードを使い、PC自体はスタンドに乗せて高くする。

「顎を引いたまま画面が見える」 この環境を作るだけで、首への負担は激減し、肩こりのリスクを最小限に抑えられます。


5. 「標準」ではなく「あなた仕様」を見つけるために

ここまで、一般的な調整法をお伝えしました。 しかし、人間の体は千差万別です。

  • 胴が長い人、脚が長い人

  • 腕のリーチが長い人

  • 反り腰の傾向が強い人、猫背の傾向が強い人

それぞれの骨格によって、ミリ単位の「正解」は異なります。 ネットに書かれている「机の高さは70cmが標準」という情報を鵜呑みにしてはいけません。あなたにとっての正解は、あなたの体だけが知っています。

ただ、自分一人でその「ベストポジション」を見つけるのは難しいものです。 「この高さで合っているのかな?」と不安になりながら座り続けるのは、ストレスになりますよね。

私たちプロの役割は、施術で体を治すだけではありません。 あなたの骨格を分析した上で、 「あなたの身長なら、椅子の高さはこのくらい」 「あなたの癖なら、モニターはもう少し遠くがいい」 といった、あなた専用のコックピット作り(人間工学アドバイス)を行うことも、重要な治療の一環だと考えています。


6. 環境は「治療」の一部である

せっかく施術で美しい姿勢を取り戻しても、職場に戻って合わない椅子に座れば、体はまた歪んでいきます。 それはあまりにも勿体無いことです。

「体を変える(施術)」+「環境を変える(調整)」 この両輪が揃って初めて、猫背は過去のものになります。

明日の出社時、まずは椅子の高さを変えてみてください。 そして、タオルを一枚、お尻の下に敷いてみてください。 その小さな変化が、あなたの背中を守る大きな盾になるはずです。


【次回予告】姿勢が変われば心も変わる? 猫背改善がもたらす「自信」の話

「環境も整えた。ストレッチも覚えた。」 いよいよこの連載も終盤です。

次回、第9回は「メンタル編」。 姿勢を良くすることは、単に健康になるだけではありません。 実は、「自己肯定感」「仕事の決断力」、そして周りからの「評価」までをも劇的に変える力があります。

「たかが姿勢」と侮るなかれ。 人生の質(QOL)を上げるための、姿勢と脳の不思議な関係についてお話しします。


編集後記

スマホを持つ位置、低くないですか?

デスク環境と同じくらい重要なのが、通勤中のスマホ姿勢です。 おへそのあたりでスマホを持っていませんか? それは「首を痛めつけている」のと同じです。 「スマホは顔の高さまで上げる」。 最初は腕が疲れるかもしれませんが、それが本来の腕のトレーニングになります。

当院では、日常動作のちょっとした「癖」を見抜く動作分析も行っています。 「無意識の癖」を指摘されるだけで、長年の痛みが消えることも多々ありますよ。

※ご相談はこちらからお気軽になさってください。

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