第2回:痛みはどこから?-あなたの膝が悲鳴を上げるメカニズム
「膝が痛いから、原因は膝にあるに決まっている」 そう思っていませんか?
実は、膝の痛みの原因は、膝そのものだけでなく、膝を構成する様々な要素の「アンバランス」にあることがほとんどです。 今回は、あなたの膝がなぜ悲鳴を上げているのか、そのメカニズムについて、少し専門的な視点から解説します。
膝関節の構造と役割:衝撃を吸収する精密なシステム
私たちの膝関節は、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)から成り立っています。この2つの骨の間に、以下のような重要な組織が存在し、複雑な働きをしています。
- 関節軟骨(かんせつなんこつ):
骨の表面を覆う、滑らかで弾力のある組織です。歩行やジャンプなどの際に、骨同士が直接ぶつかり合うのを防ぎ、衝撃を吸収するクッションの役割を果たしています。
- 半月板(はんげつばん): 大腿骨と脛骨の間にあるC字型の線維軟骨です。軟骨とともに衝撃を吸収し、関節を安定させる役割を担っています。
- 靭帯(じんたい): 骨と骨をつなぎ、関節が正しい位置で安定して動けるように支える強固な組織です。
- 筋肉: 膝関節を動かす太ももやふくらはぎの筋肉は、関節を安定させ、関節にかかる負担を軽減する役割を担っています。
変形性膝関節症は、この精密なシステムのどこかに不調が生じることで、軟骨がすり減り、痛みや変形を引き起こす病気なのです。
痛みの主な原因:軟骨のすり減り
変形性膝関節症の痛みの最大の原因は、この関節軟骨のすり減りです。 軟骨は一度すり減ると再生することが難しく、徐々にクッション機能が低下します。これにより、関節に直接的な摩擦が生じ、炎症が起こり、痛みとして現れるのです。
軟骨がすり減る原因には、以下のようなものが挙げられます。
- 加齢: 軟骨は加齢とともに水分含有量が減少し、弾力性を失います。また、新陳代謝も低下するため、小さな損傷が修復されにくくなります。
- 不良姿勢と歩き方: O脚(内反膝)やX脚(外反膝)などの不良なアライメント(骨の並び)は、膝の特定の部分に過度な負担を集中させ、軟骨の摩耗を加速させます。
- 筋力低下: 太ももの筋肉(大腿四頭筋)や、お尻の筋肉(中殿筋)が弱いと、歩行や立ち上がりの際の膝にかかる衝撃を吸収しきれず、軟骨への負担が増大します。
- 肥満: 体重が増えるほど、膝にかかる負担は増します。体重が1kg増えるごとに、歩行時にはその約3倍の負担が膝にかかると言われています。
痛みを生み出す「筋肉のアンバランス」
軟骨のすり減りだけでなく、膝関節周囲の筋肉のバランスの崩れも、痛みの大きな原因となります。
膝に痛みがあると、無意識のうちに痛い動作を避け、正しい筋肉が使われなくなります。これにより、
- 特定の筋肉に過剰な負担がかかり、筋肉の緊張やこわばりが生じる
- 使われなくなった筋肉が衰え、筋力が低下する といった「筋肉のアンバランス」が起こります。
この筋肉のアンバランスは、膝の正しい動きを妨げ、痛みをさらに悪化させる悪循環を引き起こします。例えば、
- 太ももの裏の筋肉(ハムストリングス)が硬くなると、膝を完全に伸ばしにくくなり、歩幅が狭くなります。
- お尻の筋肉(中殿筋)が弱くなると、歩くときに身体が左右に揺れ、膝に不自然なねじれが生じます。
これらの筋肉のアンバランスは、膝関節だけでなく、股関節や足首、腰にも負担をかけ、全身の不調へとつながっていくのです。
日常生活の何気ない動作が引き起こす悪循環
日々の生活の中にも、膝に負担をかける要因は潜んでいます。
- 正座やしゃがみ込み: 膝を深く曲げる動作は、膝関節に大きな負担をかけます。
- フローリングでの生活: 椅子やベッドを使わず、床に直接座る生活スタイルは、立ち上がるたびに膝に負担がかかります。
- 悪い歩き方: 足を引きずって歩く、つま先が外を向いている、などの歩き方も、膝への負担を増大させます。
これらの負担が、軟骨のすり減りを加速させ、痛みを悪化させる悪循環を引き起こすのです。
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