第2回:なぜ片側だけ凝るのか? 側弯症特有の「重力と筋肉」のメカニズム
はじめに:「右の背中」と「左の腰」がセットで辛くないですか?
「マッサージに行くと、いつも『右の背中だけ鉄板が入ったみたいに硬いですね』と驚かれるんです」
私の元を訪れる側弯症の患者さんの多くが、判で押したようにこう仰います。そして、よく話を聞いていくと、セットで「左の腰」にも鈍い痛みや重さを感じているケースが非常に多いのです(※カーブのパターンにより逆の場合もあります)。
一般的な肩こりや腰痛は、生活習慣や姿勢の癖で左右どちらかが痛むことがありますが、側弯症の方の凝り方には、明確な「法則」があります。
なぜ、あなたの体は片側ばかりが極端に凝るのでしょうか? なぜ、どれだけ揉んでもすぐにガチガチに戻ってしまうのでしょうか?
第2回となる今回は、側弯症の体が24時間戦い続けている「重力」と「筋肉」の関係について、解剖学的な視点から紐解いていきます。これを知ることで、ご自身の体で起きていることが腑に落ちるはずです。
1. 背骨のカーブと「弓と弦」の関係
側弯症の背骨の状態をイメージするために、「弓(ゆみ)」を思い浮かべてみてください。
背骨が「弓の木の部分(曲がっている部分)」だとすると、その背骨を支えている背中の筋肉は「弓の弦(つる)」にあたります。
背骨がカーブすると、左右の筋肉には全く異なる負担がかかります。
-
カーブの膨らんでいる側(凸側): 筋肉は常に引き伸ばされ、「弦」のようにパンパンに張っています。常に引っ張られるストレスに晒されているため、「張り」や「鋭い痛み」を感じやすいのがこちら側です。
-
カーブの凹んでいる側(凹側): 筋肉は縮こまり、押しつぶされています。こちらは動きが悪くなりやすく、関節が詰まったような「重苦しさ」や「ロックされた感覚」の原因となります。
マッサージ店で「硬いですね!」と言われるのは、主に引き伸ばされている側(凸側)です。 しかし、実は縮こまっている側(凹側)こそが、カーブを悪化させる「縮む力」を働かせている犯人であることも多いのです。
痛いのは「張っている側」ですが、原因は「縮んでいる側」にあるかもしれない。この複雑さが、側弯症のケアを難しくしている要因の一つです。
2. あなたの背中は24時間「筋トレ」をしている
健康な真っ直ぐな背骨の人は、骨が積み木のように綺麗に重なっているため、立っている時にそれほど筋肉の力を使いません。「骨」で体重を支えているからです。
しかし、側弯症の方は、骨の積み上がりが傾いています。 そのまま力を抜くと、重力に従って体は傾き、倒れてしまいます。
でも、あなたは日常生活で倒れたりしませんよね? それはなぜかというと、無意識のうちに筋肉が必死に体を支えているからです。
傾こうとするビルを、ロープで引っ張って支えている状態を想像してください。 あなたの背中の筋肉は、あなたがデスクワークをしていても、料理をしていても、立って電車に乗っていても、常に「倒れないように支える」という終わりのない筋トレを強いられています。
これが、側弯症の方が感じる「寝ても覚めても取れない疲れ」の正体です。 ただ生きているだけで、人の何倍も筋肉を使っているのです。
3. 「S字カーブ」が引き起こす痛みのクロス現象
大人の側弯症で最も多いのが、背中(胸椎)と腰(腰椎)で逆方向にカーブする「S字型」の側弯です。
例えば、よくあるパターンとして:
-
背中の骨(胸椎)は右に凸カーブしている
-
腰の骨(腰椎)はバランスを取るために左に凸カーブしている
この場合、筋肉の負担もクロス(交差)します。 「右の肩甲骨周りがガチガチ」で、同時に「左の腰やお尻が痛い」という現象が起こります。
患者さんは「肩も痛いし、腰も痛い。あちこちガタが来ている」と感じるかもしれませんが、これはバラバラの不調ではありません。一つの背骨のねじれが引き起こしている、一連の構造的な問題なのです。
だからこそ、肩だけ揉んでも、腰だけ電気を当てても良くなりません。背骨全体、骨盤までを含めたトータルバランスを見ないと、この痛みは解消しないのです。
4. 呼吸が浅くなる理由:肋骨の変形
もう一つ、忘れてはならないのが「肋骨(ろっこつ)」です。 背中の骨(胸椎)には、肋骨が付いています。背骨がねじれると、当然、肋骨も一緒にねじれて変形します。
これを専門用語で「リブハンプ(肋骨隆起)」と呼びます。前屈をした時に、背中の片側だけが盛り上がって見えるのはこのためです。
肋骨がねじれて固まると、どうなるでしょうか? 「肺が十分に膨らめなくなる」のです。
特に、背中が凹んでいる側の肺は、肋骨に圧迫されて動きが制限されがちです。 その結果、呼吸が浅くなります。
-
呼吸が浅い = 酸素が体に行き渡らない
-
酸素不足 = 筋肉が疲労しやすく、回復しにくい
この悪循環が、慢性的なコリをさらに頑固なものにしています。 側弯症の改善において、筋肉をほぐすだけでなく「呼吸のリハビリ」が極めて重要視されるのは、このためです。
まとめ:敵を知れば、対策が見えてくる
今回の話をまとめます。
-
左右非対称の負担: 片側は引き伸ばされ、片側は縮んでいる。
-
重力との戦い: 骨で支えられない分、筋肉が24時間過重労働している。
-
連動する痛み: 右肩と左腰の痛みは、S字カーブによるセット商品である。
-
呼吸の制限: 肋骨のねじれが、回復力を低下させている。
少し怖い話に聞こえたかもしれませんが、絶望する必要はありません。 メカニズムがわかれば、「ただ闇雲に揉んでもダメだ」ということが分かり、正しい対策が打てるようになるからです。
固まっている(サボっている)筋肉を動かし、頑張りすぎている筋肉を休ませる。そして、肋骨を広げて深い呼吸を取り戻す。 これらを意図的に行うことで、重力に負けない、疲れにくい体を作ることは十分に可能です。
次回予告:その痛み、実は「進行」している?
ご自身の体の仕組み、少しイメージできましたか? 次回は、多くの人が不安に感じている「大人になっても側弯症は進行するのか?」という疑問にお答えします。
実は、側弯症には「骨自体の変形(構築性)」と「姿勢による見せかけの変形(機能性)」の2種類があります。 スマホやデスクワークが当たり前の現代、あなたの側弯を悪化させているのは、もしかすると「後天的な生活習慣」かもしれません。
次回、第3回「その痛み、実は『進行』している? 知っておくべき機能性側弯と構築性側弯の違い」でお会いしましょう。
※ご相談はこちらからお気軽になさってください。
神戸かんねん整体
#股関節痛 #変形性股関節症 #膝関節痛 #変形性膝関節症 #四十肩 #五十肩 #側弯症 #O脚 #慢性腰痛 #座骨神経痛 #脊柱管狭窄症 #頸の痛み #肩こり #頭痛 #足の痛み #脚長差
神戸市東灘区御影中町6丁目4-23エスペランサ御影1F
078-846-0655








