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第4回:側弯症と自律神経の深い関係。「背中の張り」は「心の張り」に直結する

はじめに:性格のせいだと思っていませんか?

  • 「些細なことでイライラしてしまい、家族に当たってしまう」

  • 「夜、布団に入っても背中の違和感でなかなか寝付けない」

  • 「急に不安感に襲われたり、動悸がしたりすることがある」

  • 「胃腸が弱く、すぐにお腹を壊したり、胃が痛くなったりする」

もしあなたが、側弯症による背中の痛みに加えて、このような不調を感じているとしたら、それは決して「あなたの性格が神経質だから」でも、「ストレスに弱いから」でもありません。

それは、背骨のカーブが「自律神経」に物理的なストレスを与え続けていることが原因である可能性が高いのです。

整形外科では、レントゲンを見て「骨」の話はしてくれますが、「神経」や「メンタル」との関係まで説明してくれることは稀です。 今回は、なぜ背骨が曲がると心まで不安定になってしまうのか、その解剖学的なメカニズムをお話しします。

1. 背骨は「自律神経の通り道」

自律神経には、体を活動させる「交感神経(アクセル)」と、リラックスさせる「副交感神経(ブレーキ)」の2つがあります。

このうち、アクセル役である「交感神経」の束(交感神経幹)は、実は背骨のすぐ両脇を走行しています。 まるで電車の線路のように、背骨に沿って縦に走っているのです。

健康な背骨であれば、この神経の通り道は確保されています。 しかし、側弯症の方の場合、背骨がねじれながらカーブしているため、背骨の脇を通る交感神経が常に圧迫されたり、引っ張られたりする刺激を受けやすい状態にあります。

これはどういうことかというと、「常にアクセル(交感神経)が踏みっぱなしの状態」になりやすいということです。

2. 24時間「戦闘モード」の体

交感神経は、本来「敵と戦う時」や「逃げる時」に働く神経です。 筋肉を緊張させ、心拍数を上げ、血圧を上げ、脳を興奮させて集中力を高めます。

側弯症の方の体は、背中の筋肉の緊張や骨格の圧迫によって、この交感神経が常に刺激されています。 つまり、本人はソファでくつろいでいるつもりでも、体の中では「24時間、見えない敵と戦っている戦闘モード」が続いているのです。

これでは、以下のような症状が出るのも無理はありません。

  • 不眠・浅い眠り: 戦っている最中に熟睡できる動物はいません。体が「非常事態」だと認識しているため、脳が覚醒し続けてしまうのです。

  • 胃腸障害: 戦う時、消化活動は後回しにされます。そのため、慢性的な消化不良や便秘、下痢を繰り返しやすくなります。

  • 冷え・むくみ: 交感神経が働くと血管が収縮します。末端まで血液が巡らず、手足の冷えに繋がります。

3. 「呼吸」ができないことが焦りを生む

第2回でお話しした「肋骨の変形による呼吸の浅さ」も、自律神経に直結します。

人間は、息を「吸う」時に交感神経が働き、「吐く」時に副交感神経が働きます。 リラックスするためには、長くゆっくり「吐く」ことが重要です。

しかし、側弯症で胸郭が固まっていると、どうしても呼吸が浅く、速くなりがちです。 浅く速い呼吸は、脳に「酸欠だ!緊急事態だ!」というシグナルを送り、さらに不安感や焦燥感を煽ってしまいます。

「背中が詰まる」→「呼吸が浅くなる」→「自律神経が乱れる」→「さらに筋肉が緊張する」

この負のスパイラルが、あなたの「なんとなく調子が悪い」の正体です。

4. 背中を緩めることは、心を緩めること

ここまで読んで、「もう構造的にリラックスするのは無理なのか」と諦めないでください。 逆を言えば、「背中を緩めれば、自律神経も整う」ということです。

実際に、施術を受けて背骨周りの筋肉の緊張が解けた瞬間、 「今まで吸えなかった空気が入ってきた!」 「泥のように深く眠れるようになった」 とおっしゃる患者さんは非常に多いです。

背中の筋肉(脊柱起立筋など)の過度な緊張をリリースし、肋骨の動きを少しでも良くしてあげること。 これは単なる「肩こり解消」ではなく、物理的なアプローチによる「メンタルケア」そのものなのです。

まとめ:あなたは十分に頑張っている

側弯症の患者さんは、真面目で頑張り屋さんが多い傾向にあります。 それはもしかしたら、常に交感神経が高ぶっていて、「頑張り続けないと落ち着かない」体になっているからかもしれません。

もし、あなたが理由もなく落ち込んだり、イライラしたりした時は、自分を責めないでください。 それは性格のせいではなく、「背中が限界だよ、休んでよ」という体からのサインです。

心療内科に行く前に、まずは自分の背中を優しく労ってあげること。 固まった背中をほぐし、深い呼吸を入れる時間を作ること。 それが、あなたの心と体を守る一番の近道になります。

次回予告:施術で「できること」と「できないこと」

自律神経の話で、希望を感じていただけたでしょうか? 「じゃあ、実際にどんな施術を受ければいいの?」 「整体に行けば側弯は治るの?」 そんな疑問が湧いてくる頃かと思います。

次回は、非常にデリケートな話題ですが、絶対に知っておくべき「施術の限界と可能性」について正直にお話しします。

  • 整体でカーブの角度は変わるのか?

  • 「側弯症矯正」という看板の嘘と本当

  • 施術を受ける際の「正しい期待値」の設定方法

これを知らずに高額な回数券を買って後悔する方が一人でも減るように、プロの視点から誠実に解説します。 第5回「施術で『できること』と『できないこと』。正しい期待値を持つことが改善への第一歩」でお会いしましょう。

※ご相談はこちらからお気軽になさってください。

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